奄美の自然を守る会

南海日日新聞：2018年３月1日

西古見クルーズ船誘致

議論の場これから

瀬戸内町が同西古見・池堂地区へのクルーズ船寄港地誘致計画で揺れている。昨年11月に町内4団体代表が連名で町と議会に提出した誘致実現に向けた取り組みを求める要望書と陳情書は2月28日までに2団体が署名の削除を表明し、撤回される方向で話が進んでいる。町内複数の集落から説明会を求める要望書が提出されたほか、22万トン級の大型クルーズ船寄港地誘致に反対する団体が立ち上がった。誘致計画に対する情報が乏しい中で、さまざまな憶測、それに対する不安の声が飛び交い、町は混乱している。

誘致計画は、国土交通省が昨年8月、大型クルーズ船寄港地開発に関して奄美9か所を候補地に挙げた調査結果を受けて動き出した。
町は独自に調査を進め、候補地に挙がった町内3か所のうち、池堂地区が最も国が示す条件を満たしているとして、西古見集落で2回の説明会を実施。同集落と町内4団体から誘致実現に向けた取り組みを求める要望書を受け、昨年12月、県に支援を要望した。
町によると、今後寄港地決定までの手順として▽県と自治体から国へ要望▽県と自治体も委員として参画する第三者委員会で開発個所や規模、施設建設、地元の雇用など経済効果、環境対策などの条件を整える（条件については議会、住民、各種団体の意見を反映）▽同委員会での公募、審査▽自治体による住民説明会-があり、最終的には県、自治体の意志により誘致が決定する。
現在、国への要望はしておらず、町内4団体からの要望書が撤回されることで県に提出した要望書も「体をなさなくなる」（町担当者）。

町が寄港地誘致を目指す西古見集落は、奄美大島最西端に位置する29世帯30人余りの小さな集落。集落が同要望書を提出した拝見には、集落の急速な過疎高齢化がある。
同集落の茂節子区長（73）は26日、南海日日新聞社の取材に対し「集落として要望書を取り下げるつもりはない。私たち70代前後が集落の中心となっている今、何もしなければ10年後はどうなるのか。このまま朽ち果てていくよりは、前向きに動きたいという思い」と力を込めた。
同町の鎌田愛人町長は27日、南海日日新聞社の取材に対し「4団体からの要望書については精査が足りず、手続きに不備があったことは申し訳なかった。今後、議会や説明会で経緯を含めて町民に説明していきたい」と答えた。
誘致計画は町が西古見で説明会を開いた昨年9月の段階に戻ったといえる。3月には議会定例会と議会終了後に予定されている町民説明会があり、議論の場はこれからだ。
「情報が開示されないことが問題」。そう指摘する町民は少なくない。町は正確な情報を町民に示してほしい。人口減少に歯止めがかからない中、町に合った振興策がクルーズ船寄港地誘致か否かを含め、共に考える時間は十分にある。

◆まだ事態は収束を迎えていません。引き続き、ご協力をお願いできれば幸いです。◆
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